それから
2012.10/17 (Wed)
それから (1985年 監督:森田芳光 出演:松田優作、藤谷美和子、小林薫)
明治後期の東京を舞台に、親友の妻への愛に悩む主人公の姿を描いた夏目漱石の同名小説を、
森田芳光監督が映画化。
明治後期の東京。 裕福な家庭に育った長井代助(松田優作)は30歳になっても定職を持たず
(原作の中で高等遊民という言葉で表現されている)、読書や思索にふけり、
実業家の親の資産で食べている気ままな身分。
そんなある日、親友の平岡(小林薫)が会社を辞め、妻・三千代(藤谷美和子)とともに
3年ぶりに東京へ帰ってきた。
代助はかつて三千代に恋心を抱いていたものの、同じく三千代に惹かれる平岡のために
自ら身を引いたのだった。数年の間に3人の心は微妙な変化を見せていた。
代助が三千代とともに生きる決意をし、勘当されるまでを描く。
物語の内容的には(原作を読んでいないのだが)なんとももどかしい代助と三千代。
しかし、そこは明治という時代背景が大きく関わっていて現代の感覚で計ってはいけないのかもしれない。なんと、改正前民法の規定によれば、男が満30年に達しない間は、婚姻は家に在る父母の同意を得なければ成立しなかったらしい。「家制度」…おそるべし。
そんなもどかしくて寡黙で飄々とした代助を松田優作はすばらしく演じきっていたと思う。
藤谷美和子の病弱ではかなげな三千代も良かった。
藤谷美和子、すばらしい!本物の女優だったのね、アナタ。(今、どうしてるのかしら?)
小林薫とその他の出演陣も明治という時代にまったく違和感なくそこに居て、とても良かった。
キャスティングが良い。 久しぶりに見た笠智衆も良かった(いい役者だったな~)。
また、寡黙な主人公とヒロインの心象をところどころ前衛的な演出で描いていた森田芳光監督も
作品全体の雰囲気を壊すことなく冒険していて、とても良かったと思う。
大道具や小道具の類も雰囲気があって素敵だった。
三千代の衣装(着物)も半襟、着物、羽織が柄on柄on柄なのにちっともうるさくなくて素敵すぎる!
個人的には森田監督には、もっとこういう文芸作品を撮ってもらいたかったと今更ながら思う。
森田作品を劇場で観たのは、「武士の家計簿」が最後だったが、
森田監督には、もう少し長生きしていただきかった。 ★★★★★
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