小さいおうち
2014.02/02 (Sun)
小さいおうち (2014年 監督:山田洋次 出演:松たか子、倍賞千恵子、黒木華、松岡秀隆、妻夫木聡、片岡孝太郎、橋爪功)

山田洋次監督が、直木賞受賞のベストセラー小説を映画化したものです。
東京郊外 の“小さいおうち”で起こった小さな恋愛事件の真実を元女中のタキの回想録をもとに、
昭和初期の次第に戦況が悪化していく時代と平成の二つの時代を通して描いています。
ちょうど一年前、原作を先に読みました。(2013.1.11記事参照)
すごく面白くて、これを山田監督が映画化したらきっと良いものになるにちがいない
と期待しておりました。
映画を観終わった後、自分の記憶の中の物語に絵がつき動きが現れ、
それはそれで良かったのですが
なんだろうな~なんか物足りない感が残るな~と思いながら映画館を出ました。
時間をおくとだんだん一年前に読んだ原作を思い出し、
その「物足りない感」が何なのかが見えてきました。
私は原作を読んだ後、
タキ(黒木華)が時子奥様(松たか子)の手紙を板倉正治(吉岡秀隆)に渡さなかったのは、
タキが最初に女中として奉公した小説家・小中先生(橋爪功)から聞いた優秀な女中の心得
「言いたいことが言えず、気の進まないことも言わなくてはいけない状況の中で、
『悩む、書く、火にくべてしまえと思う。あるいは投函してしまえと思う。どちらもできない。』
そういう時、頭のいい女中がいて、自分のかわりにやるべきことをやってくれたらと思う」
という話を心に留めていたからだと思っていました。
だから、手紙を渡しては大変なことになると判断し「火にくべるべきこと」として
66年間も持ち続けていたのだと思ったのです。
小中先生が話してくれたあの逸話は結構この小説のキーポイントだと思っていたのですが
残念ながら映画には出てきませんでした。
そして、この映画は“小さいおうち”で起こった時子奥様の小さな恋愛事件=不倫を描いていますが
時子奥様の背景の描き方が薄くて、なぜ板倉正治に惹かれたのか説得力が足りないと思いました。
しかも板倉役は松岡秀隆だし・・・うーん。
時子は前夫の子・恭一を連れての再婚であり、現夫・平井(片岡孝太郎)とは十幾つも年齢差があり、
加えてセックスレスという状態です。
こういう状況の下で板倉との出会いがあったことを描かないと
時子の心情に少しも共感できないと思います。
それから、タキが戦後、東京の時子を訪ねていくシーンがありませんでした。
ナレーションだけでにせず、そこは描くべきではなかったでしょうか。
ここが無いとタキの妹の孫・健史(妻夫木聡)が老いた恭一を訪ねることに
説得力が足りなくなると思うからです。
原作と映画は別物だという考え方もありますが、
先に原作を読み大変すばらしいと思い入れが激しい分
譲れないところが大きくなるのは致し方ないのかもしれません。
配役については、タキ役の黒木華が昭和顔の妙で秀逸でした。
黒木華って知りませんでしたが、こんな女優さんもいたのですね。
タキは14歳の齢から奉公するのでどうなのよと思って観始めましたが違和感ゼロ。
大変はまり役だと思いました。
そして時子奥様役の松たか子も良いです。
最初映画化の話を聞いたときは、昭和顔の美人女優でなくてはと思っていたので
仲間由紀恵あたりか?と思っていましたが、松たか子で正解でした。
最近、めっきり艶っぽく美しくなったと思うのですが何かあったのでしょうか?
そして、奥様が惹かれる板倉役の松岡秀隆ですが、唯一ミスキャストだと思います。
私的には、美大卒で時子より6歳年下で気管支も弱い板倉正二には
伊勢谷友介でお願いしたかったですね。
悪いけど松岡くんには一目見てふらっとはいきませんもの。
その他の俳優陣は倍賞さんをはじめ隅々まで贅沢で文句なしのキャストだと思いました。
ちょっと辛口で星三つにしておきましょうかね。 ★★★☆☆
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Re: yoyoさん
yoyoさんも読まれたんですね。
そうそう、タキが手紙を渡さなかった理由は
時子奥さまのことを愛していたから、または、タキも板倉のことを好きだったから
と、捉えられないこともないんですよね。
こればっかりは真意は永遠の謎ということで終わってますね~。
私的にはタキは女性しか愛せないというより、奥さまのことを心から慕っていて
良心の呵責とたまたま良縁に恵まれなかったから独り身でいたんじゃないかと考えてました。
それじゃフツーすぎるかな~(^_^;)
読み手(鑑賞者)によっていろんな解釈が出てくるところが鑑賞後の茶飲み話の楽しいところです♪- Comment by: さとちん
| 2014年 02月04日 |